研究概要 |
平成11年度は、主に73,309人の女子児童・生徒の全国調査の資料を用いて以下の研究を行った。1.初潮と女性性の発達:初潮の時期と性別(女性性)受容の関わりを、その10年間の変化とともに分析した。性別の受容に関しては、この10年間で小学校段階の受容が高まっていた。しかし、各調査年度とともに小5から中2にかけて肯定率が低下し、中2から中3にかけては上昇するというパターンは変化していない。また性別の受容と初潮の時期との間には相関があり、性別の受容群と否定群で区分しProbit分析を行うと、平均初潮年齢(50%推定年齢)に差が見られる(1997年受容群 12.26歳、否定群 11.86歳、Pr<.05)。また初潮からの経過時間と性別の受容をクロス集計すると、単純ではないものの関わりが見られた場合もあった。2.沖縄県における思春期発達の分析:沖縄県内の女子児童・生徒4,064人の資料を分析した。沖縄県内の初潮年齢の地域差は、沖縄都市圏の11歳8.7カ月から、糸満都市圏の12歳7.3カ月のほぼ1年の差が見られた。日本全体の都道府県別の地域差より大きい。沖縄都市圏や名護都市圏、また石垣都市圏は早く、糸満都市圏や宜野湾都市圏、石川都市圏は遅い。現象的には、沖縄県の平均初潮年齢の低さの大きな要因の一つは、低年齢での性成熟の加速にあると考えられる。3.同胞数と性成熟の関係 従来より、少子化と発達加速現象の関わりが指摘されてきている。そこで、本研究においても、兄弟・姉妹の人数と初潮年齢の関係を分析した。その結果一人っ子の場合、12歳0.2カ月で、4人以上の場合は12歳2.8カ月となり、同胞数が増加すると初潮年齢が遅くなる傾向が示された。本年度の分析により、思春期変化には様々な環境変数が影響していることが明らかにされた。本研究以外の他の発達指標や、発達におよぼす地域特性の分析が必要と考えられる。
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