8-30ヶ月児の子どものコミュニケーション能力の発達水準を言語と身振りの2側面から評価する乳幼児言語発達検査(米国で開発されたMacArthur Communicative Development Inventories)の日本語最終版の標準化データ収集を神戸市、横浜市、松江市、尼崎市、小田原市の保育所で行った。「ことばと身ぶり」版は8-18ヶ月児1047名、「ことばと文」版18-30ヶ月児1838名のデータについて分析した。なお、12ヶ月児61名、25ヶ月児48名の家庭児データも収集した。家庭児と保育所児の間には、人形遊び以外、すべての尺度で平均得点には有意な差がなかったので、保育所児で標準化作業を行っても差し支えないといえる。各質問項目の年齢推移の傾向、各下位領域の尺度の信頼性、質問紙を構成している下位領域間の関係について検討した。また、1998年版、Fenson et al(1994)の米国の標準化データとの比較も行った。主なる結果を以下に示した。第1は「ことばと身ぶり」版、「ことばと文」版とも、下位尺度の内的整合性信頼係数はきわめて高かった。第2に年齢推移についてであるが、身ぶり、ことばの理解、語彙理解、語彙表出、助詞、助動詞、複雑な文の表現とも年齢推移を示した。各月齢での5-99%タイル値を求めた。言語、身ぶりとも非常に個人差が大であった。1998年版とは非常に類似した結果が得られたが、1998年版の幼児語使用から成人語使用へ語句の修正を行った「ことばの理解」では、成人語使用により50%出現月齢が最高6ヶ月遅れていた。第3は性差についてで、語彙表出、語彙理解、文法測度ともすべての言語尺度で女児が有意に高い平均得点であった。米国児との比較を行うと、1998年版同様、身ぶり、語彙、文法のすべての下位領域で3-4ヶ月の遅れが見られたが、カーブは非常によく類似していた。乳児期から幼児期のコミュニケーション・言語発達を評価する有効な手段として利用できることが示された。
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