研究概要 |
本研究は,本研究遂行者のいうパーソナリティ構造の「二重性」,つまり(1)国民性の相違に関わらずに人が持つ「一般的な」基本パーソナリティ構造と,(2)国民性の相違に由来すると思われるパーソナリティ構造,の二つの事実に焦点を合わせて,国際比較検討を行うことを目的としたものである。このことは,パーソナリティ構造の基本構造と変化可能性の構造という,いわゆる「二重性」に関わる問題点に関連すると考えられるが,この二重構造論を基礎におこなう本研究は,新しいパーソナリティ研究の視点であり,この種の研究から,パーソナリティ理論,つまり,パーソナリティ構造の持つ制限性と可塑性を究明することが出来ると考える。 具体的には,本年度の研究実施計画として,日本,カナダ,アメリカの3カ国について調査をおこない,データ分析をおこなう。研究は,本研究遂行者によって,以下の様なプランで遂行した。調査について援助やサジェッションをしてもらった研究者は,アメリカはパーソナリティ研究の第一人者のZuckerman,M.教授,カナダはLoo,R.教授である。つまり,「日本とアメリカ」については,Marbin Zuckerman教授(Univ.Delaware,U.S.A.の援助によって「Zuckerman-Kuhlman Personality Questionnaaire(ZKPQ)」「下田式性格検査(Shimoda Personality lnventory)」(共に日英版作成すみ)。「日本とカナダ」については,Robert Loo教授(Univ.Lethbridge,Alberta,CANADA)の援助によって「Karton Adaption-Innovation lnventory(KAI)」「Inventory of cross-cultural Sensitivity(ICCS)」「下田式性格検査(Shimoda Personality lnventory)」を基に多重比較などをおこなって検討を重ねた。 結果については,2,3の心理学関係の国際誌に掲載予定であるが,日本人の特徴と人としての共通性があきらかになってきた。日本人は,社交性や攻撃性が低く,また,日本人特有といわれる「執着性格」傾向も,アメリカ人の持つ強さと比較して,特に高いということもないことがわかった。
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