11年度の実験として、子どもたちが資源の少ない閉鎖空間の内部において、ペアでどのような想像活動を行うのか調べるため、昨年度に引き続き実験を行った。本年当初の研究計画を完全に実施することができた。[実験方法]被験児;N幼稚園年長児26名、年中児40名、年少児26名の計92名。今年度は単独実験を行わず、仲良しの同年齢ペアでの実験を行った。手続き;実験は以下の(1)〜(7)までのステップに従って行った。(1)子どもたちの想像力を賦活するための準備。(2)実験場面の設定;園の部屋の一室に段ボールで組み立てた月ロケットを作る。テープレコダーやVTRカメラの設置場所を確保する。(3)実験に参加した子どもたちの想像活動・会話の記録;ロケットの中に2つの席を作り、2人ずつロケットに入り2人で月へ向かって出発してもらう。最長15分。子どもたち2人が、ロケットの中でどのような会話をしているのか、どのように見立てなどを行っているのかをTRやVTRを用いて記録する。(4)実験後のインタビュー。(5)その後、ペアの子どもたちを、引き離し個別に、新たに考案した「カスタネット」課題("ふり"についてのある種の誤信念課題)を行った。これは子どもたちの想像と現実についての認識をチェックするために新たに考案した課題である。ペアで想像を立ち上げるために必要とされる"ふり"の共同性に関する認識を調べるためのものである。(6)子どもたちの両親に対するアンケート調査。(7)子どもたちの"会話能力"と"想像力"を発達的に把握するために大人のペア10組を用いた「月ロケット乗船」実験も補足実験として行った。[結果の分析]平成10年度の実験結果の一部を分析して、教育心理学会の大会論文集などに発表した。現在の結果では、子どもたちの想像活動が必ずしも待ち能力と正の相関関係にはないことが明らかになっている。データーの完全な分析は平成12年度13年度の課題である。
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