昨年度の研究成果で、痴呆度が高い場合に負担感が増大するのに対し、「介護者の会」への入会年数は負担感を軽減する効果をもつ可能性が示唆された。そこで今年度は、具体的に「介護者の会」が介護者の精神的健康に及ぼす効果を明らかにすることを計画し、213名の有効回答を得た。 分析の結果、「福祉サービスに関する情報」というサポートへの期待が最も高く、実行サポートでもほぼ同様な順位であることが判った。しかしながら、期待するサポートと実際に得られるサポートでは有意な差があることが、明らかとなった。他の参加者へ提供希望サポートでは「まだ参加していない人にも、会に参加することで介護から離れる場所をもってもらいたい」いう提供希望が最も高いことが判った。負担感の変化度では「家族や親類が自分の気持ちをわかってくれず、家庭内がうまくいかないことが負担である」という項目、消耗感では「最近、周囲の人に冷たく当たっていると感じる」ことの軽減への変化度が、最も高かった。また「介護者の会」の効果については「自分だけが悩んでいるのではない、みんな同じように悩んでいるのだと思えること」が最も高く、体験の共有化や客観化に効果があることが明らかになった。 また負担感・消耗感を軽減したり、会への所属感やサポート認知の高さと関係するのは、会内における親密な関係の存在であり、入会後メンバーの人達といかに親しい人間関係を作って行くかが、介護者の精神的健康にとって重要であることが判った。入会年数と会内親密ネットワーク(NW)の存在に関して交互作用が見られ、親密なNWの存在は入会年数が長期に及んだ場合に、より効果をもつことが示唆された。 本年度はまとめの年度であり、2件の学会報告:「介護者の会」に見られる心理的機能について(日本健康心理学会)、介護者のサポート供給源と精神的健康について(日本心理学会)と2編の学会誌への投稿:「介護ストレスサポートモデルの検討」と「介護者のソーシャルサポートネットワークの構造と機能」を行った。
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