研究概要 |
自己概念に関する従来の諸知見を整理し、規範意識としての"Should"self,行動傾向としての"actual"self,能力認知としての"can"selfの3次元から自己概念を測定する尺度を作成した。これら異なる次元の自己観得点の高さから組合せたタイプを一貫タイプと非一貫タイプとして捉え、さらに"can"selfの高低によってpositiveかnegativeに分類した。日本人大学生122名とアメリカ人大学生119名を対象として、対人行動に関わる自己概念と精神健康度(GHQ尺度)を測定した。予測どおり、positive非一貫タイプ(中低高)は精神健康度が最も高く、nagative非一貫タイプ(高高低)は精神健康度が最も低かった。Positive一貫タイプ(高高高)の健康度はpositive非一貫タイプより有意に低く、negative費一貫タイプとは有意差がなかった。文化差に関して、自己観のタイプと精神健康度との関係を吟味したところ、国の主効果も国とタイプの交互作用も認められず、組合せタイプの主効果のみが認められた。Positiveなevaluative valenceを備える場合の「柔軟な自己概念」が、硬直した自己一貫タイプよりも社会的適応に有意であることが示唆された。 つぎに、日本の看護職245名を対象に自己概念の「道具性」と「表出性」という視点から同様の吟味を行った。"should"self,"actual"self,"can"self×「道具性」「表出性」の6側面の一貫性・非一貫性の効果を検討したところ、上記と同様にpositiveな非一貫性タイプの精神健康度が最も高く、生活満足度も高い傾向が見られた。すなわち、positive非一貫性タイプの適応度の高さが示唆された。
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