研究概要 |
子どもは学校のなかで他者と交わり集団を形成することによって,さまざまなものを身に付けていくのであるが当然そこには失敗や挫折・傷つけられるといった嫌な経験も含まれる.しかしこういった学校が提示する環境と個人の組み合わせは,難しい部分を内包しており,あるときは摩擦が生じるがあるときはプラスに働くこともある.そこで"godness of fit"といった観点(phillips 1993)から,学校環境での生徒のメンタルヘルスを考え,そこで不登校におちいる生徒たちの不調和(学校ストレス)の実態について明らかにすることを目的とした. 1.不登校を生み出す学校ストレスについての尺度を構成した.その際,思春期前期に位置する中学生の不登校理解の視点として,学校不適応は「青年期の発達的欲求(動機)」と「学校環境の特質」との"適合性の悪さ(poor fit)"によるものとして捉えた.結果,例えば「独立への欲求」(ex.したくないことを強制された)対「依存への欲求」(ex.親が無関心に思えた),「所属への欲求」(ex.集団の中で一人目立ってしまった)対「集団回避への欲求」(ex.みんなと同じことをしなければならなかった),その他といった,アンビバレントな欲求の中で不調和を感じている実態が明らかにされた. 2.次ぎに,学校生活においてこれらのストレスを経験した際,不登校につながる生徒の場合copingがうまく働かず,さらにストレスを受ける対処(ex.攻撃に出る)や,ストレスが蓄積する(ex.何もしない)傾向があるのではないかとの仮説により,不登校傾向の生徒が用いるストレス対処行動について調べられた.その結果,積極的な対処方略は用いず,独特のネガティブな対処スタイル(回避する,閉じ込もる,感情の爆発,攻撃,泣くその他)を持っていることが明かとなり,それによってさらにストレスを蓄積するメカニズムが明らかにされた.
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