平成10年度は、従来の個人面接によるカウンセリングを行なうという相談・援助形態のみでは困難な不適応児童・青年に対する「こころの居場所づくり」に関する基礎的研究を行った。「こころの居場所づくり」について、(1)不適応児童・青年が憩えて元気になる「こころの居場所づくり」にはどのような条件が必要か、(2)それが不適応児童・青年に持つ意義と機能、いかなる活動がいかなる問題の心理的援助に役立つのか、(3)その心理的過程、(4)そのために援助技法、について研究した。 上記の研究を以下のような手順で進めた。【対象】九州大学教育学部発達臨床心理センターへ相談に来所の児童・青年。【方法】面接室とは別に彼らが自由に出入りして過ごせる部屋(居場所)を設けた。この部屋を活用してボランティアと共に勉強や遊び等のさまざまな活動を試み、その活動のデータを分析した。【データの収集と分析】子どもとボランティアへの面接と居場所における活動をビデオ・オーディオに記録した。 その結果、通常のカウンセリングにはのらない児童・青年にこのような活動が有効であることがわかった。また、居場所では主としてパソコンゲームやファミコン等をはじめとする多様な遊び道具やマンガ等の気楽な読み物をそろえておくことが必要であるが、それだけでなく、一部勉強道具も備えておくことも必要であることがわかった。参加者へのインタビューから、参加者の多様なニーズ応えるために、五感に対応した活動ができるようにしておく必要が示唆された。 また、家にひきこもっている児童・青年には上記のみでは不十分であり、家庭から居場所へとつなぐために、カウンセラーまたはボランティアによる家庭訪問による積極的援助技法の考案が今後の重要な課題であることが明らかになった。
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