本研究の目的は、チームで合議する際に、メンバーが"課題環境に関わる知識(だれがどんな情報を保有しているかに関するメタ知識)"を、集団レベルの情報処理に活用することが、集団意思決定の的確性および創造性に及ぼす影響を明らかにすることであった。実証活動は、総合電器企業の東京支店における複数の営業チームを対象として、会議プロセスの内容分析およびe-mailや電子会議室システムを活用した電子コミュニケーションのログ分析を中心に実施した。 初年(昨年)度は、的確な意思決定と判断によって業績を伸ばしているチームのメンバーは、同僚が、日頃からどのような営業活動を行っており、いかなる情報を持っているかについて、互いによく把握しており、メタ知識を有効に活用していることを明らかにした。 これをふまえ、本年度は、管理職のリーダーシップやチームごとの電子コミュニケーション・システムの活用方略の違いに注目してログ分析を推進した。また、電子コミュニケーション・システムの導入が、チームの情報処理に与える影響を検討する目的で質問紙調査を実施した。これらの研究の結果、コミュニケーション・フロウの形態分析によって、チームの情報共有は、すべてのメンバーどうしが情報交換する形というよりも、リーダーを中継基地として情報が行き来する形で進むことがわかった。そして、リーダーは、メンバーが保持している情報を吸い上げ、整理し、チームの営業活動方略へと練り上げ、それをメンバーに伝達する中枢的役割を果たしていることが明らかになった。こうした結果は、電子コミュニケーション・システムの浸透とともに、組織におけるチームの情報処理、そして的確な意思決定に、リーダーの果たす役割が、従来以上に重くなりつつあることを示唆している。
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