行動選択肢が2つ(XとY)の場合に、集合成員の行動がいかなる過程を経て完全一致に至るのかを比較検討した。次のような手続きで実験を行った。被験者は直径7メートルの円上に等間隔で並べてある椅子に着席した。各被験者にはB5サイズのカードが渡された。カードの表と裏は別の色になっていた。被験者はこの円の中心に向かってカードを掲げた。実験者は、全ての被験者がなるべく早く同じ色になるようにカードを表、裏と随時変えるように教示した。試行の開始時と終了時にはブザーが鳴らされた。成員間の会話は許されなかった。 集団サイズが12人の場合と24人の場合、それから実験開始の時点で一方の選択肢(X)の選択割合、即ち初期値が50%、67%、83%の条件が設定された。例えば集団サイズが24人で初期値が50%の条件では出発時にはXの色を掲げる人が12人、Yが12人とした。3回の練習試行の後、18回の本試行を行った。カードと色は試行毎に変えられた。実験はビデオに録画して分析した。 実験の結果、集団サイズは完全一致状態になるまでの時間に影響しないことが明らかになった。それからある瞬間のX、Yの選択の割合と推移確率の間にはロジスティック関数関係が見出された。マルコフモデルによれば被験者の反応は集団の過去の歴史に影響されないことが考えられる。しかし推移確率はある瞬間のX、Yの選択の割合だけでなく初期値にも影響されることがわかった。このことは推移確率が過去の歴史に影響されることを意味している。
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