研究目的:高齢者の心理的幸福感とその規定要因の分析 1、高齢者の心理的幸福感を測定する尺度の構成 従来、多義的に使用されてきた「心理的幸福感」の概念を、(1)精神的安定、(2)時間的展望の中で人生や死を受容する態度、(3)人格発達や対人関係の満足度、の3基準で理解する。 用意した20項目、5点尺度を、沖縄県および宮崎県の60歳以上の261人に実施した。尺度項目の因子分析結果、予想された3因子、すなわち、「自他受容」、「精神的安定」、「人生展望」が抽出された。従来、心理的幸福感測定のために多く使用されてきたPGCモラール尺度との相関研究の結果、本尺度が先行尺度と類似するものの、一部特徴を異にする独自のものであることを確認することができた。 2、心理的幸福感を規定する要因の分析 2-1デモグラフィック要因 心理的幸福感が被験者の性、年齢、健康度、経済状態の各レベルで違いがあるかどうかを検討したところ、性差はなく、年齢で「自他受容」因子に60歳台=70歳台<80歳台、健康で「精神的安定」因子に良>悪、また経済で「自他受容」因子に安定>不安定という先行研究と類似した結果が得られた。 2-2孫との関係要因 祖父母が認知した祖父母機能として、「価値・伝統文化継承機能」、「日常的・道具的機能」、「形式的機能」の3因子を見出した。いずれの機能も、心理的幸福感の「自他受容」の側面に正の関係を持つことが分かった。
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