1 祖父母からの接近:祖父母機能の違いおよび孫からの支援タイプが、祖父祖母の心理的幸福感に異なる影響力を示すのか検討した。その結果、祖父の場合、孫の世話をする「日常的・道具的」機能を果たしているほど心理的幸福感の低下がみられた。一方孫との「娯楽」を楽しむことが祖父母の心理的幸福感を高める効果があることが分かった。 2 孫からの接近:孫との「娯楽」が高齢者の心理的幸福感に貢献することが明らかにされたことから、孫と情緒的な親密関係にある祖父母ほど心理的幸福感が高いと予想される。では、孫が親密感を抱く祖父母とはどのような特徴をもつのだろうか。孫の性、孫が長子か否、父親が長子か否、祖父母との居住距離、祖父母の年齢、祖父母の健康度などの変数を取り上げて、沖縄と宮崎の両地域における孫の祖父母に対する親密度との関係を検討した。その結果、孫本人が長子であることが父方祖父に対する親密感を高めることが、孫の性、地域の違いにかかわらみられた。また、宮崎地域だけで、孫息子の場合、父親が長男であることが父方祖父に対する親密度を高める要因であることがわかった。得られた結果は、日本における伝統的な「家」機能の中で、kinkeeperとしての父方祖父の存在を示唆するものであり、先行研究が母方祖母を強調してきた結果を発展させるものである。
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