研究概要 |
本年度は、まず、Zohar(1980)の作成したSafety Climate Questionnaireを基にして労働安全衛生尺度を作成した。大手物流会社の従業員470人を対象に質問紙調査を行い、尺度の信頼性、妥当性を検討した。その結果、5因子(安全衛生行動の遵守、安全衛生教育の効果認知、安全衛生の軽視、自分の健康に関すること、職場の危険度認知)が抽出され、各下位尺度のα係数は.68〜.94であった。また、安全行動遵守尺度は安全衛生教育の受講時間との相関も高く、妥当性が確認された。内的コントロール型の個人は外的コントロール型よりも安全衛生行動を遵守していることも確認された。 次に、労働安全衛生に関連させて、健康増進・維持のためにウォーキングを推奨するという説得場面を設定し、質問紙を用いて実験を行った(n=614)。運動不足の確認の有無(認知的不協和理論に基づいた要因設定)、他者のウォーキング実施率に関する情報の提供(37%,7%,情報なし)を要因とした2×3の要因実験を行った。その結果、ウォーキング実施意図、(質問紙調査実施後3〜4週間における)ウォーキング実施回数などの従属変数に関して、実験要因の主効果、交互作用効果は認められなかった。しかし、重回帰分析を行ったところ、高年齢群(23〜71歳、n=78)の場合に、(a)ウォーキングの実施意図が高く、(b)自分の健康は運に左右されていると考え、また、(c)自分の健康は周囲の人によって決められていると考えていないほど、ウォーキング実施回数の多いことが見出された(R^2=.29)。低年齢群(18〜22歳、n=174)の場合には、ウォーキング実施回数と関連性の高い変数は認められなかった。
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