本年度は、安全衛生行動のうち衛生行動に焦点を当てた。衛生行動の中でも、日々の健康維持とも関連するウォーキングを勧める効果的な方法を明らかにするために質問紙実験・調査を行った。まず、ウォーキングについて受け手(回答者)に思考させることの効果を明らかにするために、質問紙実験を行った。ウォーキングの効用について自由記述させる条件、ウォーキングの効用に関する項目をチェックさせる条件、ウォーキングの効用については思考させないコントロール条件を設定した。質問紙実験後、約4週間に行ったウォーキングの実施回数に関する条件間の有意差は認められなかった。しかし、チェック条件において、ウォーキング実施回数とウォーキングに対するポジティブな態度との有意な関連性が認められ、説得の内容について思考させることの有効性が示唆された。 続いて、Ajzen(1991)の「計画された行動の理論」に基づいて、ウォーキングの実施回数と関連する変数を明らかにするために質問紙調査を行った。その結果、ほぼAjzen(1991)の理論通りの結果が得られた。ウォーキングの実施回数と直接関連していたのは、ウォーキング実施の行動的意図であった。その行動的意図は、ウォーキングに対するポジティブな態度、重要他者からの期待と有意に関連していた。さらに、重要他者からの期待と関連していたのは、重要他者のもつ専門勢力と参照勢力であった。受け手に働きかける場合、受け手の重要他者の助けを借りることが1つの方策になることが示唆された。
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