研究概要 |
平成8年度〜9年度の科学研究費所保金【基礎研究(C)(2):課題番号08610149】によって、癌患者に対するインフォームド・コンセントが患者からパーソナリティに如何に大きな影響をもたらすかを確かめることができた。引き続き、平成10年度〜11年度の本科研費を受けることにより、今回、我々は癌患者の再発に対する不安に焦点を当てて研究を進めることとした。平成10年度の研究の方法と成果を次に要約する。 1.被験者:(1)京都警察病院乳腺外科で受診し、初めて乳癌(段階IIおよびIII)と診断された女性30名。平均年齢45歳。(2)(1)の被験者のうち、2年以内に再発した患者3名(死亡者は除く)。(3)滋賀県下の病院で受診し乳癌と診断され、4年以内に再発した女性4名(平均年齢47歳)。 2.上記、被験者と個別に面接し、ロールシャッハ・テスト、死の不安テスト(Death Anxiety Questioonaire)を施行した。 3.被験者が了解した場合のみ、癌の体験について手記(2000字程度)を書いてもらった。 4.2および3の結果をまとめると、再発患者の不安は、初発患者に比べて極めて高いことが明らかとなった。また、まだ再発していないにもかかわらず、癌患者への再発への不安は高いことも明らかとなった。しかし、再発患者のショックの強さは、彼らの手記や死の不安を通して、初発のショックに比べて有意に高いことが結論された。 5.今後の研究課題は、彼女らの高い不安をいかにして緩和することができるかということである。彼女らは、最低でも月2回は筆者と心理的カウンセリングすることを切望している。 本年度は、各被験者に、月1回の面接とカウンセリングを実施して、かなりポジティブな効果を上げることができた。 【参考文献】 Cella, D. F. & Trass, S. 1987 Dath anxiety in cancer servial: Preliminary cross-validation study. Journal of Personality Assessment, 51, 451-461.
|