人が一般にもつ他者観の中で、年齢やそれに伴う変化をどのように認識し、これによって他者の能力をどのように推論しているのかは極めて重要な問題である。そこで、このことを明らかにすることを目的に、能力観、年齢観に関する調査を行なう計画を立てた。この第一歩として、年齢観を問う調査を行なった。具体的には、多様な能力についてこれが可能となる年齢の推測とこれが実際に可能となる年齢の比較を、知能テストの項目を用いて実施した。被調査者は、大学生および乳幼児を育てている最中の母親群である。また、乳幼児から成人までを対象とした場合に、実際の諸概念の獲得および能力獲得がどのようなものであるのかを押さえておく必要があると考え、年齢に伴う負の変化の側面についての概念発達を整理した。特に、病気、死などの概念の獲得に関する先行研究のまとめを行ない、年齢観を構成する時間的な変化過程についての認識を捉える助けとした。 人の発達は、身体的変化と精神的変化の両面から捉えることができるだろうが、年齢変化に伴って生ずる能力変化についても、身体的側面と精神的側面の両面が考えられる。人の心身に深くかかわる年齢を関数とした変化の一つは老化や死への過程といえる。このうち、死の概念については、歴史的に長期にわたる関心の対象ではあったが、必ずしも統一的な知見が得られているわけではない。今年度の研究においては、子どもから成人までの死の概念の共通性と相違を、先行研究に基づいて検討し、また、成人について、子どもに実施されたのと同様の質問内容の調査を実施し、両者の関係を再検討した。これは、さらに死の概念発達観の資料と照合して検討することが必要となる。 また、一般に人がもつ人の発達に関する認識については、資料を収集し、整理を行なっている作業中であり、これについては今後の課題である。
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