研究概要 |
昨年度実施した調査に関して、さらに分析を進めた。この調査には、自尊心尺度(Ros enberg,1965)、自大学・他大学の評価(教員の質、研究設備、就職先、カリキュラム、学生の質、世間からの評価など12の側面)、サークル・大学・家族の状況、友人関係(最も親しく付き合っている同性の友人との関係の質についての評定)などが含まれ、男女大学生約250名に対して実施された。とくに、自尊心と自大学、他大学の評価に関して一貫した結果が得られなかった理由について、自尊心尺度の信頼性の問題を中心に検討中である。また、今年度は新たな展開として、罪悪感情と自尊心の関係について調査を企画している。罪悪感に関しては、近年その対人的側面が強調され概念化が進められているが(Baumeister et al.,1994)、Doosje et al.(1998)は、集団成員に、外集団を組織的に軽視したという内集団の歴史の記述を読ませることで、「集団的罪悪感」が生起することを実証的に明らかにしている。こうした集団的罪悪感の問題を扱うことが、自尊心と集団的自尊心の関係を検討するときの一つの切り口となることが期待される。今回は、Doosje et al.と同様の方法を用い、日本が過去に他国に対して行ったとされる否定的行為およびその結果に対して、自尊心および集団的自尊心の異なる回答者がどのように反応するかを明らかにする予定である。
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