1.情緒不安定と摂食障害を訴えたクライエントへの、イメージを用いたカウンセリングケースの発話語彙分析を行った。途中、カウンセリングにおける危機状況があった。それを越えることによって、良くなっていったケースである。語彙分析において、危機状況では、クライエントの発話語彙数が急激に増え、危機状況における後半では、発話語彙数が減少した。具体的発話語彙の特徴としては、面接終了に近い面接回で、初めて否定的感情を表す語彙が用いられるようになった。このように、語彙分析において、クライエントの変化の特徴が現れることが示唆された。 2.自己催眠における教示の存在と、他者の存在が被催眠者の自己空間にどのように影響を与えるかという観点から、被催眠者の発声分析が行われた。その結果、他者の存在は、自己催眠に入る前においては、自己空間を狭める働きをしていたが、しかしこの影響は、自己催眠における自己空間の大きさと同じであった。すなわち、他者がいない場合においても、他者がいる場合の覚醒状態と同じ広さの自己空間に自己催眠中は狭められると考えられる。また、自己催眠における教示の有無に関しては、教示がある場合には、広がったり狭まったりの変動が大きかった。また、自己催眠中は、「あー」の発声における明瞭度が低下した。 3.否定形暗示文が肯定形あるいは否定形・肯定形両方の影響を及ぼす感情において、否定形としての作用を及ぼすようになるには、どのような作用過程をたどるのか、調べられた。結果としては、否定形暗示分が繰り返し与えられると、快で活性度の高い感情領域においては、否定形暗示分が否定形として作用するようになるという結果が得られた。しかし、不快で活性度の低い感情領域においては、肯定として影響を及ぼすという結果が見られた。
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