研究概要 |
コミュニケーション回避・不安(Communication Avoidance and Apprehension:CAA)を低減するための社会的スキル訓練プログラムの開発には,高不安者の間でコミュニケーションに関わる感情,思考,行動がどの程度共通しているかを決定することが重要である.本研究では,高レベルのCAAを持つ学生たちによるフォーカス・グループを形成し,コミュニケーションについての単構造的な質問を行い,その回答に対して主題分析法を適用した. 日本コミュニケーション不安尺度(JCFS-40)を学生に配布し,得点が1標単偏差以上のボランティア参加者23名を4つのフォーカス・グループに分け,コミュニケーションについて質問を行った.アメリカでは調査したい対象に対して類似した態度や考え方を持つ人々を集め,意見を収集するフォーカス・グループ方式が採用されており,その定量化の手段として統計的な主題分析法(SPSS TextSmart)が開発されている.本研究ではコミュニケーションに関する自分たちの認識について率直に話し合う雰囲気をかもし出すために用いた.グループ内での会話内容はSPSS TextSmartによるクラスタリングと単語頻度により分析され,会話内容の一貫した主題を表すカテゴリーを多次元尺度法と各事例ごとの単語出現の有無によって定量的に推測した. その結果,CAAの高い学生は.相手に対する親近性の有無がコミュニケーションに大きな影響を持っていること,自分より目上ないしは目下の相手へのコミュニケーションに強い忌避傾向を持つこと,友達に対してはよい聞き手であるという信念を持っていること,他人からの評価を敏感であることなどが定量的に明らかとなり,アメリカでのフォーカス・グループの結果とも多くの共通点が見いだされた.したがって,アメリカでのCAA低減のための社会的スキル訓練プログラムを少し改良を加えれば,日本でそのままに近い形式で適用できることが示唆された.
|