研究概要 |
平成10年度の研究では,高コミュニケーション不安者によるフォーカス・グループを形成し,主題分析法を用いてコミュニケーション不安の原因や理由を分類した. 平成11年度では,そのデータをさらに詳細に分析をし,米国の研究と比較・検討した.その結果,日米とも見知らぬ他人との会話が楽しめないことは共通であった.しかし,日本の場合には知り合いであれば,むしろ会話は楽しいとの報告であった.一方,話すことがなければ自分から話そうとしない態度,親近性の無さと手近な話題の知識の欠如は不安を増大させる点は米国と同様であった.話さないことに関して,日米の参加者たちはともに相手の話を聞くことを楽しむ,自分たちは聞き手であると感じていた.不安レベルは,米国と同様に場面,話題,相手に依存していた.したがって,日米の高コミュニケーション不安者のフォーカス・グルーブ間での反応は,日米の文化差にも関わらず類似性が高いことが明らかとなった.その原因として,回答の中から抽出された主題のひとつは「否定的評価への恐れ」であった.理由としては,日本の文化では初対面や社会約関係における否定的評価は将来の相手との関係に影響を妨げる恐れが強いためと考えられる.もうひとつの主題はスキル欠損であった.多くの学生が会話を継続することの困難さ経験しており,特に相手が見知らぬ場合に顕著であった.すなわち参加者が話題を作るスキルに欠けており,コミュニケーション相手との潜在的な関係がさらにスキル欠損を悪化させると考えられる,上記の結果について,全米コミュニケーション学会第85回大会において発表を行った.さらに本年度は,学生に対する質問とその回答の音声信号をコンピュータに取り込み,潜時や沈黙時間を比較約簡便に測定するシステムを完成した.現在,コミュニケーション不安の高さと話し方の関係を検討中である.
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