本研究計画の目的は、社会的表象たる文化的自己観の相違に基づく社会的行動の文化間変動と、文化的自己観が個人の認知的表象に反映された程度に基づく個人行動の文化内変動との間に、相同乃至並行関係が成立するか否かを、実験的に検討することにある。 上記目的に則り、相互協調的自己観に基づく日本人の自己批判的傾向と、相互独立的自己観に基づく加奈陀人の自己高揚的傾向が、日本・加奈陀の文化比較実験研究で得られたが(文化間変動)、これに対応した文化内変動(相互協調性の強い個人は自己批判的傾向が顕著であり、相互独立性の強い個人は自己高揚的傾向が著しい)は、日本人被験者には見られたが、加奈陀人被験者には認められなかった。 さらに、日本人被験者における相互独立性-相互協調性の相違に基づく文化内変動は、自己査定行動、自己カテゴリー化、等の自己に関連した行動についても認められることが実験的に確認されたが、加奈陀人被験者には認められない斯かる傾向の背後に、日本人の快楽的自己認識の特有の様態があることが示唆された。
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