<目的>家庭における日常的、自発的な母子のやりとりの中で生じる子どもの笑いを指標として、乳児期における発達的やりとり困難期とその要因、及び、子どもの笑いの規定因を探ること。 <今年度の実績>ビデオ記録する「育児日記法」によって収集されたビデオデータの分析を行った。最終的に得られたビデオデータは、6〜12か月と15か月のそれぞれで、9、14、16、15、16、14、12ケースだった。 <分析方法>子どもの笑い、不快、母親のくすぐりの開始時点を基準として、その前後20秒を4時間区分(5秒間)に区切り、全体として9個の5秒時間区分からなる45秒間を1エピソードとした。分析コードは以下である。 【母親】(1)行為のタイミング(予期的、不意)、(2)行為の型(そのまま、ふり)(2)くすぐり(4)随伴情動表出(真顔、微笑み、笑い)【子ども】(1)意図性(受け身、協調的、自発的)(2)情動反応(真顔、微笑み、笑い、誘発笑い、不快) <主な結果>(1)エピソードの分析結果〜子どもの月齢ごとのエピソードの平均出現率を横断的に分析をしたところ、8か月で、笑いのエピソードの頻度が最低となり、不快のそれが高くなるU字型の増減傾向を示した。(2)個人差〜子どもの笑いの頻度の高かった母子と不快の表出頻度が高かった母子とを縦断的に比較したところ、両者の違いを説明するのは、母親の随伴情動表出ではなく「ふり」を用いるかだった。さらに、笑った子どもの親の行為構造では、「ふり」から「そのまま」へ、またはその逆方向への突発的な切り替えが子どもの月齢とともに多用されたが、不快の多いケースでは全く見いだされなかった。 <本研究の知見>(1)8か月頃にやりとり困難期があること、(2)親の遊技性(ふり)と子どもの気質(陽気さ)とが相互作用して、困難期の程度に個人差を生むこと、(3)生後半年から子どもの笑いが親の行為構造(出来事の創造)が示唆するおもしろさの発見であること。
|