情報公開・市民オンブズマン運動の全国的な状況に関しては、全国市民オンブズマン連絡会での会議等に引き続き出席し、過去の運動の流れと到達点を調査し、過去3年間での変化をとらえた。これらを日本における初期市民オンブズマン運動の状況として、社会的背景や、それぞれの基盤についてまとめ、『市民オンブズマン運動における社会教育の諸問題』(弘前大学教育学部紀要)として著した。この論文では、実証研究上の課題として、社会教育「終焉論」とのかねあいで、「お任せ民主主義」克服の課題を市民オンブズマンがどう位置づけているかが焦点となることを示した。 また、青森県と仙台市のオンブズマン運動の比較を通してそれらを実証し、核燃サイクル施設建設反対運動という特殊な住民運動の展開の中で情報公開やオンブズマン活動が必要とされてきた青森県と、オンブズマンを中心として従来の地域自治運動の質を高めようとしてきた仙台市の事例を検討した。両者の性格は違ってはいるが、どちらも「オンブズマンお任せ民主主義」は課題となっており、特に、参加者の意識の違いは両者にも「お任せ型」と「積極型」として現れ、地域課題における学習要求の差が見られることを示した。その背景には、多党派、あるいは一般市民の集まりであるという組織上の特徴から、参加者の地域活動における自己の活動目的の違いがあることを論証した。この両者の要求の違いを認識しながら、会員の積極性を引き出す学習が求められ、それは地域自治に対する意識の変革を必要とするという、教育上の課題が提示された。
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