研究課題/領域番号 |
10610158
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
武田 共治 弘前大学, 農学生命科学部, 助教授 (70206978)
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研究分担者 |
菅野 仁 宮城教育大学, 教育学部, 助教授 (30214729)
大和田 寛 仙台大学, 体育学部, 教授 (30177026)
横山 敏 山形大学, 人文学部, 教授 (20102874)
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キーワード | 農本主義 / 農業倉庫 / 加藤完治 / 御家禄派 / 菅原兵治 / 庄内松柏会 / 山木武夫 / 長南七右衛門 |
研究概要 |
平成13年度は、第1に、庄内地方の農本主義運動の地域的・歴史的背景に関する研究を進めた。庄内農民は米づくりに全精力を傾注して、農民魂を集中的に表現するという伝統を形成してきた。かかる日本有数の穀倉地帯として、庄内特有の社会的構造が形成されたのである。その地域的特質は、(1)巨大地主地帯であること、(2)米の流通が完全に巨大地主に独占され、巨大地主と生産農民の権力格差を決定的なものにしたことである。この2つの地域的特質の上に、4つの歴史的特質が加わってくる。それは、(1)酒井藩の農業重視と米券制度の発達、(2)戊辰戦争の戦後処理および西郷隆盛と庄内との関係、(3)庄内藩の地元定着政策、(4)庄内藩の経済的活動である。こうした地域的・歴史的特質の上に、御家禄派(旧庄内藩家臣団)の山居倉庫活動が展開し、それに対応する産業組合の農業倉庫建設運動が展開するのである。第2に、御家禄派の山居倉庫等と結びついた安岡正篤や菅原兵治の教学農本主義に関する研究を進めた。具体的には後家禄派の経済的支援を得て成立した庄内松柏会の会誌を第1号から最新号まで収集(撮影)して松柏会の活動を歴史的に追い、また安岡や菅原の教えを受けた長南七右衛門(松柏会初代幹事長)の思想の特徴を把握した。第3に、山居倉庫と対抗した産業組合の農業倉庫建設運動を対象に農本主義運動と農民の生活行動の関連に関する調査を進めた。この農業倉庫建設運動を展開したのが、加藤完治の弟子である山木武夫や渋谷勇夫たちであった。とりわけ、農業倉庫運動の研究を進める中で、農民の生活行動と農本主義との関わりが明らかとなった。それは、(1)山木たちに農本主義的理念なくして、劣勢な農業倉庫が山居倉庫に対抗できるはずもなかった点、しかし、同時に、(2)産業組合闘争は、生産農民の生活そのものの中から生み出されたものであり、農本主義がその直接的な動因ではなかった、という2点に要約される。
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