前年度は、「ごみ問題とリサイクルに関する仙台市民調査」を仙台市において実施した。本年度は、この調査データを整備し、その分析を行った。 まず、単純集計、クロス集計といった基礎的データから、仙台市民の環境配慮行動の取り組みに対する実態や、環境問題に対する意識などの傾向を把握した。その結果、9割の人が実行している行動(省エネなど)もあれば、多くの人が取り組んでいない行動(コンポストの使用など)もあることが明らかになった。リサイクルに関しては、古くから回収ルートがある新聞紙・古雑誌のリサイクル、仙台市が回収をすすめており家の近くのごみ収集ステーションを利用するビン・缶、ペットボトルのリサイクルは7割以上の世帯でいつもリサイクルされているのに対して、スーパーなどで回収がすすめられている牛乳パック、トレイのリサイクル、また、衣類のリサイクルをいつもしている人は、ビン・缶などと比較するとまだ少ないことが明らかになった。環境に対する意識と実行率の関係については、意識が高いにもかかわらず、取り組まれていない行動がかなりあることが明らかになった。 複数の環境配慮行動の構造を検討するために因子分析を行った結果、リサイクルには2つの種類があることがわかった。実行に伴うコストが小さい低コストリサイクルと、コストが大きい高コストリサイクルである。本研究では、このように分類されるリサイクル行動を阻害する要因は何かを検討するために、(1)属性(仙台に住む以前の居住地域)、(2)他者行動認知とリサイクル行動とのかかわりを分析し、以前の居住地域によってリサイクルの実行率に違いがみられるがそれには学歴が関係している、他者行動認知によってリサイクル行動に違いがみられる、ということを明らかにした。さらに、合理的な個人を仮定したDiekmann and Preisendofer(1998)不実行の正当化の原理から、実際に個人はどのような正当化の戦略を選択する傾向があるのかについて把握した。
|