環境配慮行動の実行に前向きであるにもかかわらず、環境配慮行動に取り組んでいない人々が現実には少なからず存在する。本研究では、ごみ問題の解決の一手段であると考えられるリサイクル行動に焦点を当て、リサイクルの実行メカニズムを検討した。本研究の特徴は、合理的選択理論を環境問題に適用し、それを計量分析に繋げようと試みているである。そのために、2000年2月12日から14日にかけて、仙台市民を対象に「ごみ問題とリサイクルに関する仙台市民意識調査」を実施し(郵送を併用した留置法で実施)、1200世帯の家事担当者に対して回答をお願いした(確率比例抽出法、回収率は84%)。 本研究では、はじめに、環境配慮行動の不実行を正当化するメカニズムを探求した先行研究の検討を行い、いかなる不実行の理由が選択されるのかという傾向を把握した。そして、コストにかかわる理由に対しては規範意識が、情報の欠如に関しては環境意識が、時間がないといった理由に対しては、規範意識や態度、子供の有無などが影響を与えていることを明らかにした。次に、リサイクルの実行の有無を効用関数の異質性と他者行動認知の違いから説明した。設定した効用関数は、無条件不実行型、他者同調型、フリーライダー型、無条件実行型の4つであるが、ほとんどの回答者が、無条件協力型、他者同調型に属した。効用関数のタイプを被説明変数として判別分析を行った結果、無条件実行型と無条件効用関数のタイプの違いをもたらす規定要因は、規範意識、コスト感、いいわけに対する許容度であることがわかった。最後に、仙台市における居住年数や前住地とリサイクル行動のかかわりについて検討した。生まれたときから仙台市に住んでいる人のリサイクル実施率は低いのに対して、関東以西からの転入者は実施率が高く、その変動は、仙台居住年数の違い、環境意識の違い、年齢層の違いなどによっては説明されないが、学歴構成の違いによっては部分的に説明されることを明らかにした。
|