現代日本の夫婦関係の親密性を実証的に測定するために、夫婦や未婚カップルに対するインタビュー調査、及び、質問紙調査を行った。 平成10年度のインタビュー調査によって、夫婦の親密性欲求が、男女によって異なり、特に、夫の親密行動が夫婦の仲のよさによって意味をもっていること。しかし、男性は、親密行動を「労働」と認識する度合いが強いことが分かった。 その結果をもとに、平成11年度は、学生に対する予備的調査を含め、都下の市及び地方の町を選んでの大規模な質問紙調査を行った。その結果、カップルの感情関係は、二つの要素から成ると認識されている点が確認された。一つは、ロマンチックな感情の系列、もう一つは「仲がよい」というような親しみの感情の系列である。そして、夫婦生活の維持のためには、後者が重要であり、前者はあったらいいが、なくてもかまわないものと位置付けている傾向が特に、女性に強かった。 後者の感情を維持するためには、人々は様々な感情労働と呼ばれる行動を行う。性差を検討したところ、都市部の夫婦では男性が「気を遣う」などの感情労働をより多く行い、地方では年齢が高いほど女性が行う割合が高まることが確認された。特に、未婚者のカップルでは、圧倒的に男性が女性に対して気を遣っており、従来の男性の経済力をバックに、女性が気を遣うという従来のステレオタイプ的な構図が崩れていることが分かった。
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