本年度の主な研究実績は以下の3点に要約される。 (1)昨年度行った、長野県丸子町の中堅企業「(株)A警報器」の、女性労働者調査のデータ整理を行った。当該女性労働者の賃労働のみではなく、農業労働、家事労働等の分担などトータルな「労働」実態、及び職場・農業・家事労働における性別り職務分離の状況等を分析し、当該地域の農民女性の生活構造を明らかにした。分析結果を要約するなら、賃労働においては、男性が検査・管理職等に就いているのに対し、女性は組み立てライン、秘書、受付にといった性別職務分離が、また雇用形態も男性は正社員か嘱託(定年後の再雇用の場合)であるのに対し、女性は臨時社員と正社員という差異がみられた。農業労働については、自家用野菜程度の農業にまで縮小している世帯から米農家までさまざまなバリエーションが見られたが、概ね自家用の畑や補助的な草むしり作業は女性が担当していることが多く、基幹的な農業労働は夫や親夫婦などが分担していることが多かった。これらの労働力構造を振り分けるイデオロギー装置についてはさらに詳細な分析を試みたい。 (2)-昨年11月に東京高裁で和解が成立した「(株)A警報器」の「賃金差別訴訟」は、司法が、非正規労働者(農家の女性労働力を含む)を安価で使い捨て可能な労働力とする企業の論理に対する一定の歯止めを打ち出したとして注目されたが、連合が2001年春闘を「パート春闘」と称したように、労働運動においても全国的に女性パート労働者の重要性が認識されはじめている。また雇用形態のみならず、男女の賃金差別等もさまざまな形で告発されはじめているが、今年度はこれらのケースについての収集も行った。 (3)岩手県沢内村については、村内の事業所並びに農業、農家の現況についての資料、統計データ収集を行い、地域における農民女性、女性労働者の実態を明らかにした。
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