本研究は、昭和・平成期上級官僚の役割創出・変容の解明を通して、昭和期日本官僚制の歴史的役割を検証評価することを課題とする。計画初年である本年度は、上級官僚の役割意識を形成する官僚キャリアに関する第2次的資料調査を実施し、彼らの経歴データを加工処理するデータベース(DB)システムを開発した。以下に、その成果概要を示す。1.DBシステムの基本設計には、リレーショナル型DBシステム(マイクロソフト社のACCESS97)を採用して、システムの基幹となる(1)基礎項目DB(コーホート・氏名・生年等)の主DB、(2)経歴DB(就任年月・在職期間等)、(3)部局職位DB(省庁・部局・職位等)、(4)各種コードDB(都道府県・官庁等)等の副DBを作成し、クエリー機能を用いてDB間のリンク構造を設計した。システム詳細設計では、実際の運用のための画面設計、帳票設計、統計パッケージへのデータ変換設計を行った。さらに、プログラマ開発、データの移行、システム稼働確認の後行フェーズへ開発を進めている途上である。2.平成6・7年度科研費研究対象者604名の経歴を「人事興信録」「全国官公界名鑑」(38・39版)「職員録」(平成9〜10年版)によって追跡調査し、加えて「職員録」から新たに抽出した763名(平成10年版から501名、昭和30・40・50・60年版から262名の局筆頭課長クラス以上)の経歴を上記人名録・職員録の各年版によって調べ、そのデータをカード(紙)DB化した。全対象者(1938〜75年入省)を5つの入省コーホートに分け、官僚経歴のコーホート分析を行った結果、(1)東大卒比率、法学専攻修了者比率の低下、(2)新卒採用の確立、(3)後行コーホートへと、初任課長、局筆頭課長、局長、次官・長官の初就任年齢が高くなり、それは階位が高くなるほど顕著化すること、退官年齢の高齢化はそれに対応していないこと、等々の知見を得た。経歴の調査と分析は次年度に継続される。
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