これまでの調査結果を整理し、既発表論文や学会報告の成果もふまえて、以下のように研究成果をまとめた。 →機械化と減反政策にともなう総兼業化よって、農家の女性の地位や役割構造は大きく変容した。 ◎変化した側面 1.農外就労の賃金は、後継者の妻の労働評価を高めた。 2.農業労働についても家事労働についても分担している作業については責任が任されており、意思決定から乖離した「ただの働き手」といった問題状況は見られない。 3.農業経営費から生活費が分離し、家長による一元的管理は見られず、生活費の管理については、主婦に任されている。後継者世代の女性への主婦権の委譲もスムーズに行われている。 →今日的形態におけるイエは「家父長的」性格を払拭している。 ◎変化していない側面 1.今日でもなお、直系家族の家族構成を活かした複数世代の男女による性別分業や世代間分業が、農業労働と農外労働と家事労働について行われている。 2.多就業状況のもとで収入源が多様化し、別勘定が個人や夫婦世代ごとに分化しても、なお複数の世代間を束ねる主家計が存在している。 →今日でもなお、日本農業は、家族労働力を駆使した小農(≒イエ)に担われているのであり、今日の農家をイエと規定することができる。
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