「生の哲学」と行為理論の思想的・理論的関連を掘り起こし、これを「生活態度」の構造論として再構成するための準備作業として、本研究では、特にマックス・ヴェーバーとゲオルク・ジンメル、主として前者の哲学的・形而上学的想定と行為論との関連に焦点を絞って分析し、以下の諸点を明らかにすることができた。 1、ヴェーバーとジンメルにおいては、「魂」、「生」及び「生の諸力」といった形而上学的諸概念が社会理論の決定的な構成要素になっている。 2、この点で、両者の社会学は当時のドイツの「生の哲学」の時代思潮に規定されており、カール・ヤスパースの実存哲学もこの流れに位置づけられる。 3、「生の諸力」による「生」と「世界」の形成というのが彼らに共通する形而上学的想定である。 4、「生の諸力」は「魂」の態度決定によって選択されるが、選択された「力」は魂に対して自ら(力)をその「内的固有法則性」に従って実現するよう要請(命令)し、魂はその「存在と行い」においてこれを実現するというのが、歴史的「生」に関するヴェーバーの形而上学的想定である。 5、「生の諸力」は、ヴェーバーの場合もマックス・シェーラーと同様、「価値」理論的に形式化されており、この点では新カント派哲学の影響が窺われる。 6、その形式化に基づいて、ヴェーバーは「行為」を「価値実現のプロセス」として歴史哲学的に定義し直しており、これが彼の理解社会学の方法、すなわち「行為の主観的に思われた意味」の「解明的理解」を理論上可能ならしめている。 6、「価値判断」ないしは「実践的な価値関係」による行為の「意味賦与」というヴェーバーの想定が、行為の「意味解明」という独自の認識方法を可能ならしめている。
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