研究概要 |
研究の最終年度にあたる第3年度は,第2年度に行ったザーベイ調査のデータの集計・分析を完了し,報告書の作成を行った.研究期間の当初においては年度末に最終報告書をまとめることだけを想定していたが,第2年度における実査の過程で対象者の関心がきわめて高いことを痛感したので,急遽対象者向けに独自の報告書を作成し,協力者全員に郵送することにした.そのため8月までに単純集計と基本的なクロス集計の結果をとりまとめ,対象者向け報告書の原稿を作成した.報告書は対象者にとって見安く,わかりやすいものにするために,2色刷でごく薄いパンフレット形式にした.さらに郵送費も必要となったので,その分最終報告書の印刷費用をさらに切り詰めることにした. 9月までに発送作業を完了し,その後は最終報告書に向けての集計・分析作業と原稿のとりまとめを行った.なお,対象者向け報告書を郵送した後で,一部の対象者にたいしては改めて依頼を行い,補足的な追調査も試みている.その結果は特にそれ自体で報告書にまとめられてはいないが,各分析・集計でえられた知見の質的な解釈にそれぞれ生かされている. 詳細については最終報告書にまとめておいたが,分析・集計の結果,これまでさまざまな形で明らかにしてきた神輿などの地域活動,かつて行われた子どもの活動などを担ってきた人々の社会的背景をより広い視野から確認することができただけでなく,その世代的な再生産と継承のされ方についても,ある程度明らかにすることができた.また,今回初めて明らかにできた知見として,1980年代以降に新しく流入した人々がすでに住民の多数を占めるに至っているという事実がある.ここには東京という大都市地域全体の構造的な転換が確かに影響しているわけで,そのなかでこれまで世代的に継承されてきた地域の文化や活動の維持が将来的に困難になっていくことが予想される結果となった. 以上のように,今回の調査・研究は都市の発展を制御する都市政策のあり様を,都市コミュニティの社会的な形成過程と世代的な再生産という社会学的な観点から評価することの必要性と有効性を一定程度実証的に示すことができたと考えている.
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