本研究は、建物をはじめとする周辺環境は〈もの〉ではあるものの、日々の〈生活〉や〈教育〉を具体的に支えており、処遇をこれまでとは異なる視点で捉えることができる、という視点にたっている。ここでは、北海道家庭学校などの夫婦小舎制をとる児童自立支援施設(1998年3月まで教護院)を対象とし、連物の図面を示し、旧職員に聞き取りを行い、児童・職員・職員家族がこの場でどのように生活してきたか、この場が住まいとしてどう機能してきたかを把握する、という手法をとっている。 1998年度は、前年実施した北海道家庭学校調査の内、未整理史資料を整理し、また次年度調査の準備に当てた。その成果は、主に新築・改築前後の全寮舎の平面について比較検討し、日本生活学会第25回秋季研究発表大会において発表した。結果、本施設では、それぞれの時期の指導者(ここでは校長)の思想や教育理念などが、「生活の場」に反映されていることが明らかとなった。 更に、永年教護院に勤めた旧職員(藤山俊二氏)に聞き取りを行う、現在ある児童自立支援施設をいくつか見学する、などを行い、今後の研究の進め方や調査対象施設を決める準備をした。1999年度は、現在なお北海道家庭学校と同様の夫婦小舎制をとり続けている岡山県立成徳学校を対象に、これまで同様の調査を行う同意を得た。
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