児童養護施設等に措置された被虐待児の家庭復帰には、多くの危険が伴うことが先行研究から明らかにされている。本研究においては、被虐待児の一時保護・措置解除事例の分析を通じて、以下の点が明らかになった。 1 解除後のフォロー(家庭復帰後の援助)を適切に行うためには、措置の時点で、措置に至った原因や保護者の状況を適切に把握しておくことが重要である。 2 一人親の再婚等による家庭環境改善を理由に家庭引き取りが行われた場合、児童虐待の再発防止のためには、被虐待児の状況だけでなく、大人の関係や家族力動を見極める必要がある。 3 家庭引き取り後、親子関係が形成されるまでの間、保護者から児童相談所に定期的に報告する義務ないし引き取り後の養育支援システムを制度化する必要がある。 4 児童相談所の実務としては、家庭引き取りを目標にできない(すべきでない)事例であるか否かの見極めが重要である。 5 児童養護施設の実務としては、家庭引き取りに向けて、担当児童福祉司と施設の担当職員とが共通の理解をもち、児童の意向を開き、保護者と協議しながら進めることが必要である。 6 措置解除後のフォローは、適切かつ総合的に行われる必要があるため、地域における関係機関の連携を保障する仕組みを設ける必要がある。 7 児童福祉法28条による施設入所の場合、意思能力のある児童および保護者、親族に措置解除措置の承認を家庭裁判所に求めることのできる申立権を認める必要がある。
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