本研究の目的は、第1に、農業の近代化や集約化、あるいは大規模なリゾート・観光開発による環境や地域経済、地域生活への影響を明らかにし、第2には、投機的な外部資本による開発ではなく、環境保全的な農林業を基軸にした持続性のある自立的な循環型地域社会形成の条件を考察することにある。そのために、有機農業・環境保全型農業を柱に、地域資源を生かした地場産業やエコ・ツーリズムなどを組み合わせて地域の再建・活性化を図っている地域を対象とし、主として現地における聞き取り調査によって把握する方法をとった。そして、これまで点的存在であった有機農業・環境保全型農業が面的広がりを獲得するなかで、地域においてどのような社会・経済システムや生活文化を形成し、都市とのネットワークや意味空間(「公共圏」)をどのように広げつつあるのか、といった点に焦点をあてて調査を行った。本年度は以下の作業を行った。 1.研究テーマにかかわる理論的枠組みの検討を行った。 2.本年度は都市住民との連携・ネットワークを形成しつつ有機農業・環境保全型農業が地域的広がりをみせている愛媛県明浜町の補足調査を行うとともに、環境保全を視野に入れた伝統的建造物群(宿場)保存による観光開発を行い持続的な地域づくりをめざしている福島県下郷町において聞き取りと資料収集を行った。 3.平成10年度から本年度にかけて現地で収集した資料やデータの整理作業を行い、成果の一部を論文としてまとめた。
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