今回の調査で明らかになったことは、市民・行政・企業の間のパートナーシップ核となる市民活動を中心にしたNPO(民間非営利組織)と、それに接する行政・企業との境界が柔らかくなり、行政・企業の中の人たちもNPOと共働で地域に「公益領域」を創り出そうとする動きが現われていることを確認できたことである。そしてその「公益領域」の場が先の3者の関係する「コミュニティ」なのである。八戸、名古屋、三重、仙台、帯広、札幌等のヒアリング調査で得られた知見をまとめると次のことが言える。 パートナーシップの仕組みに関する基本認識としては=1)NPOは「公益領域」での活動主体であり、その領域の大切さを自覚した者たち(行政、企業、非営利共働セクター)が、直接援助(人・金・情報)および基盤整備を行う。2)NPO、行政、企業、非営利共働セクターは、それぞれが組織としての社会的責任を自覚し、具体的にはそれぞれが関わるコミュニティの活性化を目指して共働する。 次にパートナーシップを成り立たせる条件としては=1)NPOは実績(そのためのしっかりした組織をつくること。2)NPO、行政、企業、非営利共働セクターは、共に「NPOセクター」を形成しつつあるという自覚をもつこと。3)具体的な関係では、組織を背負わない個人どうしの関係であること。(肩書きなしの関係。それが「公益領域」の特質のーつ。)4)相互の信頼関係が根本であること。そのためにはお互いによく知り合うこと。そのためには互いの垣根を低くしておく(境界をオープンに)。加えて、相手の価値観や言葉を理解する媒介者を必要としている。 以上の結果、市民・行政・企業のパートナーシップによる「持続可能なコミュニティ」が形成される。だがNPOをとりまく状況は時々刻々と変化している。その現状をリアルタイムで捉えるには、さらに研究を続けていく必要がある。 (785字)
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