本研究は、市民・行政・企業のパートナーシップの下に、市民公益活動によって地域で環境問題に配慮した「持続可能なコミュニティ」が形成されていく可能性を探ることを目的としていた。研究成果は、(1)地域で環境問題に取り組む環境NPOの活動について、(2)環境NPOを軸としたパートナーシップ形成について、(3)世界遺産の候補地でもある鎌倉市という「環境自治体」における市民と行政のパートナーシップによるコミュニティづくりについて、の3点に具体的に現われている。 第1は、論文「環境NPOとNPO段階の市民運動-日本における環境運動の現在」(『講座環境社会学』第7巻、有斐閣)として今年出版される予定である。環境問題を分類し、それに取り組む環境NPOはコミュニティづくりに収斂していくことを明かにした。 第2は、論文「環境NPOの現在とパートナーシップ形成の可能性」(「NPOシリーズ」第7巻『NPOと環境』、ミネルヴァ書房)として今年12月に出版される予定である。環境NPOの支援体制の中で行政や企業とのパートナーシップ形成の条件について述べている。 第3は、「鎌倉NPO環境・交通調査」として報告書の形でまとめた。鎌倉市に対しては、1998年度には環境分野での市民活動、1999年度には環境問題としての交通対策とコミュニティづくりについて行政と市民のパートナーシップに焦点を合わせて調査した。これはゼミの学生たちとの共同執筆となっている。 これらから明らかになったことは、現代の大きな流れはパートナーシップを通じて「市民社会」実現に向っていること、しかしまだ市民の力が弱いこと、そのエンパワーのためには制度的枠組が必要なこと、具体的にはNPO法への税制優遇措置の追加、市民による民設民営のNPOサポートセンターの充実である。なおNPOサポートセンターについては、『講座・社会変動』第10巻「計画化と公共性」(ミネルヴァ書房)の中の論文として現在執筆中である。
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