2年続きのプロジェクトの最終年に当たる今年は、昨年度末に行われた監査役を対象にした質問票調査の集計・分析を行いながら、他方でこの発見をもとに、従来から計画していたアジア駐在経験者を対象にしたインタビュー調査を継続していった。前者については、「アジア派遣人員の選抜と人的資源管理」という論文としてまとめられ、近日発表される予定となっている。また後者については、合計53のケースをまとめた資料集を今年の2月に完成させており、調査に協力いただいた方々や国内外の専門家にお送りしている最中である。 インタビューの記録をもちいた丹念な分析については、もう少し時間をかけてゆっくり行う予定であるが、質問票調査については、以下のような知見が得られたことを報告したい。 第一に、アジアへの駐在が決定するまでのプロセスや帰国後の処遇について、その人事の仕組みが場当たり的であるという批判が強くみられている。第二に、派遣人員の要件として重視されているのが、急激な職場条件の変化に対応できる柔軟さや仕事に対する取り組み方なとの属人的な要素であって、語学力についてはあまり重視されていない。第三に、しかし現地語や英語の能力については、駐在した場所によって評価が異なっており、中国や台湾、韓国では現地語の能力が、香港やフィリピン、シンガポールなどでは英語の能力が駐在員の条件として重視される傾向が見られる。 以上で指摘した事実が駐在期間とはほとんど無関係に同様に見られていること、またインタビュー調査の結果からも着任時期と無関係に似たような事実が指摘されていることからも、日本の企業における国際人事政策の再構築が急務であることが結論づけられる。
|