入管法改正によって、ブラジルからの日系人のデカセギが大量化して10余年が経過し、現在22万人のブラジル人が滞日する。デカセギ期間は長期化し、その一部は定住化する様相もある。しかしながら、ブラジル人と日本人との関係は希薄で、棲み分けと分離が進行している。 分離を生み出す構造的要因として、第一に、ブラジル人の雇用は人材派遣会社経由の雇用であり、地域社会では派遣会社が一棟借りしたアパートや自社の住宅に彼らを住まわせるという「囲い込み」状況にあることがある。第二に、ブラジル人の集住地ではエスニック・ビジネスが集積し、エスニック・コミュニティやネットワークが形成され、日本人と接触しなくても日々の生活がおくれるようになっていることが挙げられる。 ブラジル人の雇用形態の特徴から、多くのブラジル人が居住しているにもかかわらず、そのメンバーは入れ替わっており、日本人住民にとっては誰が住民かわかりにくく、「顔の見えない定住化」となる。いったん、ゴミ出し、騒音に代表される生活上のトラブルがおこると、問題をはらむ負の関係となる。文化摩擦の背景には、言語の壁、価値観・行動様式の違い、生活習慣の違いがあるが、構造的にもブラジル人と日本人が個人的な関係を結びにくい要因があることに留意する必要がある。日本人住民にとっては、ブラジル人のいる光景は見慣れたというだけで、概して人間関係形成に至らないが、日本語ボランティア、宗教団体、学校に通う子供をとおしての関係など、一部では日本人とのかかわりの芽がみられる。なお、学校現場では、小学校ではブラジル人と日本人の子供同士の人間関係ができる場合が多いが、中学校から編入した場合は適応上も深刻な問題を抱え、人間関係も形成しにくい。行政主導の国際交流イベントは相互理解への試みの一つだが、あまり実効をあげていない。
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