本研究は、現代社会における四国編路道を取り上げて、道空間、社会文化的装置、移動者の意識・属性に規定される「道をめぐる人間経験」の内容を実態的な調査を通じて明らかにすることを基本的目的としている。今年度(11年度)の研究期間においては、昨年度までのわれわれの研究成果を踏まえて、第1に、四国遍路道の沿道地域現地調査として、「お接待」習俗を中心とした調査を行った。これは、四国4県においてそれぞれ地域を選定して、研究代表者および分担者で調査チームを組織し地域インタビュー調査を行ったもので、その成果については現在報告書にまとめるべく準備を進めている。第2に、昨年度までの調査結果をも含めて、総合的視点から四国遍路についての社会学的研究成果を学術研究書としてまとめる。原稿もほぼ準備できており平成12年内に出版する予定になっている。第3に、平成10年にCD-ROMとして作成し出版した「現代社会と四国遍路に関する社会学的研究」、および昨年度試験的に開設した四国遍路に関する学術データベースのホームページ(早稲田大学文学部)においてデジタル化した素材を用いた授業、香川県長尾町と電話回線で結んだ双方向遠隔授業を実験的に行った(早稲田大学エクステンション・センター1999年9月〜10月「『道』講座第1回〜第4回」)。第4に、板東三十三ヶ所観音巡礼についての札所寺院へのインタビューを中心とする調査を行い、現在報告書をまとめている。第5に、現在日本全国で行われている巡礼に関する概要をまとめるために、各巡礼事務局を対象とした郵送アンケート調査を実施し、その成果を現在まとめている。第4、第5は、巡礼・旅の道の新たな視座展開に向けて、比較研究を行うためのパイロット調査として実施したものである。
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