本研究は、現代社会における四国遍路道を取り上げ、道空間、社会文化的装置、移動者の意識・属性に規定される「道をめぐる人間経験」の内容を実態的な調査を通じて明らかにすることが基本的目的であった。全体の課題を大まかにまとめると、1.遍路道沿道住民と遍路者の交流に関する調査、2.四国遍路についての社会学的研究の総合的成果をまとめた書籍出版、3.四国遍路との比較のためのパイロット・スタディ、4.デジタル化した遍路道データシステムの教育現場での活用の4つとなる。1については、平成10年度に、まず遍路道沿道住民と遍路者の交流を「お接待」習俗に注目しながら調査するための準備として、調査地点の選定および予備的調査を行い、平成11年に入って同調査地点に対するインテンシヴなインタビュー調査、資料収集を行った。その成果については、現在報告書を作成する準備を進めている。2については、平成6年の遍路経験の社会文化的装置に関する研究、および平成8年に行った遍路者対象の意識と遍路経験に関するアンケート調査の結果と今回の研究期間における「お接待」に関する調査の成果を総合的にまとめるための書籍を出版する準備を進めている。3については、平成10年度に四国遍路との比較を行うために坂東三十三カ所観音巡礼について社会学的調査を実施し、また平成11年度にそれらを現在の全国巡礼布置状況の中に位置付けるための調査(郵送アンケート調査)を実施し、その成果を現在まとめるべく準備中である。また、4については、(1)平成10年度に作成したCD-ROM「現代に生きる四国遍路道:四国遍路に関する社会学的研究」の活用、(2)平成10年度に解説した遍路道関連ホームページの利用により、平成11年4月に一般市民向けの講座(生活の質土曜講座)を行うとともに、9月〜10月にかけては早稲田大学エクステンション・センター『道講座』で四国遍路道についての講義を行った。さらに、平成12年度には、衛星を使った通年の遠隔講義「現代社会と巡礼の道」を早稲田大学で行う予定である。
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