平成11年度の研究は、1.福岡県内の市町村、2.佐賀県内の市町村の二圏域の介護保険事業計画に関して、専門職・行政職に対してインタビュー調査をおこなった。 調査対象を、福岡県と佐賀県に絞った理由は、両者が介護保険の広域的実施を予定していたからである。原則として、介護保険の保険者は市町村である。そのことから、小さな市町村にとっては数多くの困難性が付きまとうことは予測された。ここで、小さな市町村は、市町村間の「画一性・平等性を指向するのか?」、「地域特性を重視する立場を取るのか?」の選択を迫られることとなった。全国的に広域的実施が模索されている過程で、まず、佐賀県では、佐賀市を中心とした広域連合が実現に向かって大きく前進した。さらに、福岡県では、ほぼすべての町村ともいえる70近くの町村が広域連合的実施に踏み切った。以上の事情から、「画一的平等性か?」「地域特性の重視か?」、という根幹に係わる問題を、もっぱら介護保険事業の広域的実施という視角から検討することを目的として結果、対象は二つの県に限定されることとなった。 前年度からの継続調査とインタビューを通じて、以下のような担当者の意識と今後の課題が明らかとなった。それらは、1.取り敢えず実施するためには、準備の遅れた市町村にとっては、平等性をかかげた広域的実施が好都合であったこと、2.そのこととの関係で、「地域特性は、広域連合の支部単位でも出せる」という意識が担当者の意識の基底に芽生え、「平等性」の確保をうたいつつ、広域的実施に向かわせたと考えられること、3.従って、今後は、地域特性を踏まえたサービス提供が、住民から距離のある大圏域で確保できるかが課題となるであろうこと、である。 平成11年度の研究を踏まえ、12年度は、介護保険事業の広域的実施に当たって、広域連合レベル、支所レベル、市町村レベルの三者関係がどのように作用したかを、「要介護認定」、「保険料」、「サービス提供」の三点を中心に調査・研究し、事業を単独実施する市町村と比較することが必要となろう。
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