昨年度までの調査・研究によって、コミュニティー・ケアの実施にあたっては、「画一性や平等性」の重視と「多様性や地域特性」の重視という二つの価値軸の衝突が見られることが明らかとなった。これは、施策に限らず、担当者の意識面においてもみられるものと推測されることから、最終年度の調査・研究は、実施段階に入った「介護保険事業」を対象とし、「事業」のありようと担当者の意識の関係を析出することを主な狙いとした。この手法により、コミュニティー・ケアの理念がどのような形で具体化するのかについての一定の「解」が得られると考えた。調査・研究対象を、「広域連合的実施」と「単独実施」の混在している「福岡県」と「佐賀県」としたことは正しい選択であったといえる。 調査・研究はアンケートとヒアリングという形態を基本とした。担当者の意識を析出するねらいから、アンケートは、自由記述を多く含んだものを使用した。配布は、福岡県、佐賀県を中心としていたが、最終年度のみは、福岡県内の97市町村と広域連合(本部と支部)とした。最終年に限れば、37市町村より回答を得たものの、広域連合関係からは、一切の回答を得ていない。解析は定性的なものを中心とした。 ヒアリングは、「福岡市」、「北九州市」、「久留米市」、「筑後市」、「中間市」、「大牟田市」、「水巻町」、「芦屋町」、「豊津町」等で、担当者と専門職に対して実施した。 コミュニティー・ケアの実施にあたっては、具体的な施策の内容においても、担当者の意識の面においても、「画一性や平等性」を重視するものは「他者に依存する」傾向が強くあらわれており、「多様性や地域特牲」を重視するものは「自己責任」の傾向が強くあらわれるという傾向があることがわかった。
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