わが国のエスニック問題の一つは、アイヌ民族との共生の問題であって、そこには大きな社会問題がひそんでいる。百年以上にわたる開拓の積極的展開によって、北海道の地域は見ちがえるように様相を変え、今日では気候をのぞき、ほとんど内地と変わらなくなった。しかし、その社会には歴史的に見れば、非常に弱まったとはいえ、政治・経済的に優位に立った者が劣位民族を偏見でもって蔑視し、差別してきたという社会的事実が存在し、同じ日本人の間に不平等や偏見を残存させてきた。 このような社会的事実を社会調査の方法によって探り、アイヌ民族の宗教・文化・生業などの生活実態を明らかにしようとした。アイヌの人びとの生活の質と和人のそれとを比較することによって、また、その地域福祉の差異を面接調査・資料・統計的な多変量解析をおこないながら分析した。平成10年度と11年度の対象地と対象者は、それぞれウタリ協会白老支部の人たち、白老町の一般住民、そして、ウタリ協会門別支部の人たちであった。なお、今後も収集できた資料をもとにさらに分析を深めていきたい。
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