本年度はジェンダーの問題と最近の高校教育を取り巻く状況に関しての文献研究を中心に行い、若い世代の教師2名、女性教師2名のインタビューを実施した。まだ、インタビュー実施人数は少ないので、以下はあくまでも作業仮説レベルの新たな知見である。 1、 前回の中年期以降の男性教師研究では、45歳以下は組合に無関心であるということであった。それを前提に、本年度は30歳代の2名にインタビューした。今回の調査での新しい知見は、単に年齢を変数と考えるのは不十分で、どのような高校文化を経験したかが重要である、ということであった。若い世代の中で組合に関わる教師は、高校時代に「自由な学校文化」を経験した者で、自分の高校時代の体験と照らし合わせて、今の教育現場を批判していく手段として、組合に関わっている。それに対して、「管理教育」を経験した教師は、今の教育現場に疑問を持たず、受け入れている、と組合に関わる教師たちからの見解があった。 2、 中年期以降の女性教師にインタビューを実施したが、女性教師の場合、学校内部の問題だけでなく、男性教師の時には話題にならなかった家族の問題が重要なテーマであった。例えば、初期の段階では育児、後には親の介護などはジェンダーの問題として女性教師には重要であり、この30年間の日本社会の性役割を反映し、女性教師たちは、家庭においても「セカンド・シフト」(第2の勤務)をすることが期待されきた。 文献研究に時間が多く費やされ、インタビュー実施人数が少なく、若い世代では組合に関わる教師、女性教師では50代半ばの教師へのインタビューに限定されていたので、来年度は、組合に関わらない若い世代の男性・女性の教師に対してインタビューを広げる予定である。学校現場をより理解するためにインタビュー調査の実施が最も有効であることを再確認した。
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