研究概要 |
本研究は高校教師におけるジェンダーと世代に関する社会学的研究である。ライフヒストリー研究の枠組みでインタビュー調査を行なったもので、インタビュー対象者は50歳代の女性教師5名、40歳代以下の女性教師3名、40歳代以下の男性教師6名計14名の愛知県立高校教師である。本研究は同じ枠組みで行われた19名の男性高校教師の社会学的研究(平成7年-平成8年度文部省科学研究補助(基礎研究B)『教師文化からみた受験体制の社会学的研究』)を発展させたものであり、本報告の知見はこの両調査研究に基づくものである。以下のような知見が見られた。 1,高校の教育職場における女性の権利意識には世代差がある。50歳代の女性教師は「戦後民主主義」世代のパイオニアとして、教育現場における出産休暇、育児休暇、育児時間などの法的措置を現実の場で実行する権利を獲得してきたという意識があるが、40歳代以下の女性教師はそのような法的措置を当然の権利と考え、学校現場において必ずしも女性教師の男性教師とは平等には扱われていないと考えている。 2,50歳代の男性教師の場合は組合活動、受験指導などにどのような態度をとるかが昇進をめぐる重要な関心事であったが、女性教師の場合には、年代にかかわらず、学校における職務の遂行と家庭の維持とのバランスがもっとも重要な関心事であり、女性の家庭での「セカンド・シフト(第2の勤務)」としての育児、家事などの女性への負担を夫は必ずしも理解していないという夫批判を共有している傾向がある。 3,高校教育における受験体制に対する態度は世代による差がある。50歳代の教師の中には、組合活動の視点から受験体制を批判するグループがいたが、40歳代以下の教師のほとんどが、性別にかかわらず、受験体制を前提として進路指導、教育指導を行う傾向がある。
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