本研究は高校教師のライフヒストリーをジェンダーと世代差から分析を試みたものである。以下の3点でジェンダーと世代による差がみられた。 1.教師になるきっかけ:「50歳代男性教師」ではデモシカ教師が一般的であったが、「50歳代女性教師」は社会進出し働くことの唯一の手段として教師になった。また、若い世代の女性たちは働くことを当然と考え、男性と平等の条件で働き続けることのできる数少ない職業として就く。さらに、若い世代にとっては、教職は「望ましいもの」「憧れるもの」であり、そこに世代差がある。 2.新任師時代:政治的風潮を反映して、「50歳代世代」の教師たちは「組合の時代」を経験し、まだ受験体制の確立しない高校で自由に教えていた状況であったが、「50歳以下の教師」は男女に関わりなく、受験体制の影響を反映している。また、「女性軽視」のまなざしは、世代に関係なく女性教師に向けられる現状がある。 3.ターニング・ポイント:「50歳代男性教師」は30歳中期に「管理職志向」「組合活動志向」「専門学習志向」の3つのタイプに分かれていった。それに対して、「50歳代女性教師」は、「結婚と育児」が最も決定的な規定要因になって、「家庭と職場のバランス」を調整する教師生活が、子育ての一段落着く40歳代半ばまで続いた。また、若い世代は受験体制の確立した構造の中で、男性は受験指導、生活指導などでより多くの役割を担っていく教師と、一部のより専門学習を行っている教師に分かれていく。若い世代の女性教師は社会進出のパイオニアという意識は以前の世代ほどなく、仕事と家庭を両立している。
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