第1に、在宅福祉サービス体系における家族介護者についての実証的研究を進めるうえで、既存研究における理論および調査枠組についての分析をおこなった。分析対象は、本研究に着手する以前から扱っていた家族機能論や在宅福祉論の分野に加えて、地域保健学や地域看護学の分野も含めておこなった。さらに、2000年4月から介護保険制度が開始されることもあり、ケアプラン作成に必要な複数のアセスメント(評価)手法が開発されているが、それぞれの手法において家族介護者のアセスメントがどのようにおこなわれるかの比較検討もおこなった。家族介護者を要介護高齢者と同様な被援助者と位置づけている場合もあれば、援助者にとっての共働者と位置づける場合など、研究分野や実践領域による差異がみいだせた。 第2に、K市での調査をおこなった。前年度から開始しているT病院の訪問看護の対象である重度の要介護高齢者を抱える世帯についての補充調査を実施するとともに、調査結果の分析をおこなった。次年度に向けて必要な追加調査項目について検討した。また、K市の要介護高齢者や在宅福祉サービスの現状についても資料収集と分析をおこなった。過度の介護負担が家族内の人間関係の悪化や子世代の離婚問題等を生じた事例等もみいだされた。 第3に、東京圏および名古屋圏内にある在宅福祉サービス関連の施設や団体を対象にして、見学やヒアリング調査を実施することで、在宅福祉サービス体系に家族介護者をどのように位置づけるかをめぐる問題点や課題をより明確化するように努めた。
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