本研究は、要介護高齢者の介護は、家族が担うべきか、社会が担うべきかという2者択一の見方ではなく、家族と社会との「共働」という第3の道のあり方を追求することが求められているという認識に立ち、「家族介護者」を在宅福祉サービス体系のなかに理論的および実証的に位置づける試みである。 主な成果のひとつは、社会学や看護学を対象として、わが国における家族介護をめぐる既存研究、とくに、在宅福祉サービスと家族介護者との関連を視野に入れた既存研究を検討した結果をまとめたことである。これにより、それぞれの分野における家族介護をめぐる研究の流れや今後の研究課題を把握するとともに、家族介護者支援の実践への示唆をえることができた。 もうひとつの成果は、在宅療養サービス利用者およびその家族介護者を対象とした調査と、2カ所の訪問看護ステーションでの家族介護者と訪問看護婦との連携に関する調査を、いずれも愛知県内で実施したことである。前者は、質問紙調査と個別面接調査の両方を実施することで、在宅福祉サービスの利用状況も含めて、家族介護者の日常生活の実態を構造的に把握できた。また、訪問看護ステーションをはじめとした在宅福祉サービスを高齢者および家族介護者が活用し、在宅での生活を乗り切ることができている後者での事例報告によって、在宅福祉サービスの担い手との適切な連携があることで、家族介護者の不安や困難な点が解消されて、在宅介護が継続できることが明らかにされた。
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