本研究の目的は、4カ国のコミュニティの特徴を比較することである。その方法は共通尺度による比較であった。しかし、それぞれのコミュニティの特徴には全く異なる事柄が多く見られるため、共通尺度を用いても比較が困難であった。そこで、共通尺度に変わる方法を用いることにした。それはそれぞれのコミュニティに見られる固有の論理を追求することである。固有の論理は、それぞれのコミュニティの見られる自然生態や社会生態に依拠している。 世界に見られるユダヤ人コミュニティの特徴は、コミュニティ自体が宗教共同体であるという点である。その伝統を引き継いだイスラエルのコミュニティは、キブツである。キブツは宗教共同体としての特徴と、国家建設としての特徴を併せ持っている。したがって、契約の論理がそこでは貫徹される。 マレーシアのコミュニティの特徴は、自然環境の生態系に依拠しながらコミュニティが形成されたことである。そのため、人々の結びつきは暖い。平坦な低湿地に散在して居住する彼らは、集団としてのコミュニティではなく、個人と個人の結びつきが最も重要である。そこには、間柄の論理がみられる。 タイ国、正確にはタイ国東北部のコミュニティは塊村である。また、村は台地の上に位置している。村人は天水田で稲作を営んでいる。ここでは個人と個人の関係も大切であるが、集団としての結束も重要である。したがって、そこには両者を状況によって使い分けるという意味で、選択の論理が働いている。 日本のコミュニティは、2000年という長い歴史を有し、しかも灌漑稲作を営み、塊村を形成してきた。そのため、村は個人よりも集団としての性格が優先している。そこでは、集団の論理が優位である。 以上のような、それぞれのコミュニティに見られる固有の論理の追求は、現地調査という手法が有効であるといえよう。
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